盗撮の慰謝料(示談金)の相場は?しっかりと示談交渉を行うには
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盗撮をしたことがバレて加害者となった場合、起訴されてしまい前科がつくと、家族や職場に知られてしまうため、示談交渉をして不起訴処分を得る必要があります。その時に必要になるのが慰謝料(示談金)です。
この記事では、盗撮事件の慰謝料の相場や高額になるケースなど、具体的にご説明します。
盗撮事件の慰謝料(示談金)の相場
盗撮事件の加害者となった場合に、請求される慰謝料(示談金)の相場は10〜50万と言われています。
そもそも「慰謝料」とは、犯罪行為によって被害者が受けた精神的苦痛に対して支払われるものです。
被害者は、見ず知らずの人から盗撮をされた恐怖心や、そのデータを悪用されるのではないかと不安感といった精神的苦痛に対して、慰謝料を請求できます。
モノを壊してしまった、怪我をさせて治療費が発生した等のケースは、損害の金額が比較的わかりやすいものですが、被害者の精神的苦痛は簡単には計れないものになります。
しかし大体の相場というものはあり、盗撮事件の場合は上記のような金額感となっています。
示談により前科のつかない不起訴処分を得られる可能性がある
盗撮事件の加害者になった場合、不起訴処分を得ることが重要になります。
不起訴処分となった刑事事件は、警察や検察の捜査が終了し刑事裁判が開かれないため、「有罪判決となり前科がつく」ことはありません。
不起訴処分を得るためには、被疑者と被害者の間で示談交渉を行う必要があります。示談締結には、慰謝料(示談金)を支払う必要があり、基本的には話し合いで金額を決定します。
慰謝料(示談金)が高額になるケース
盗撮事件の慰謝料(示談金)の相場は10〜50万円程度となっていますが、初犯なのか・何度も繰り返しているのか・盗撮したデータをアップロードしたのか等で、より悪質な盗撮は慰謝料も高くなります。
例えば、エスカレーターで盗撮をしようとして失敗、それが初犯だった場合は、先ほどの相場の慰謝料で済む可能性が高くなります。しかし、常習的にトイレや更衣室にカメラを仕掛けて盗撮をし、それをネット上に公開していたなどのより悪質な盗撮事件は、相場よりも高い慰謝料を請求される可能性もあります。
また、被害者が未成年だった場合や、加害者の社会的地位が高いなどの場合も、慰謝料の金額が相場より高くなるケースとしてあります。
加害者が未成年の場合はどうなる?
盗撮事件の加害者が未成年であったとしても、慰謝料(示談金)の請求が発生する場合があります。
一般的に、慰謝料請求が争われる民事事件上では、12〜13歳程度の判断力があれば、自分の行為(この場合は盗撮行為)の意味が分かるため責任も生じ、慰謝料の支払い義務が発生するとされています。
慰謝料と示談金の違い
慰謝料と示談金は同じような意味合いで言われることがありますが、厳密には違います。
「慰謝料」とは先述したように、精神的な苦痛に対する賠償を意味します。一方で「示談金」とは、刑事事件の一切を終わらせるために加害者から被害者へと支払われる金銭になります。
示談締結をすると、当事者間での刑事事件は終わったことになるため、それ以降の慰謝料の請求などはできなくなります。
また盗撮事件における示談金は、慰謝料と似た意味で支払われることが多いため、慰謝料の相場を参考にして金額が決定される場合が多くあります。
意味は違う慰謝料と示談金ですが、基本的にはどちらか一方を支払うことになったり、慰謝料の相場をもとに示談金の額を決定することが多いため、密接に関係しており、同じような意味合いで扱われることが多くなります。
罰金と慰謝料の違い
犯罪行為をしてしまった時に請求されるものとして「罰金」がありますが、慰謝料とは違うものになります。
罰金とは刑事事件の刑罰として、被疑者が国に納めるものになります。一方で慰謝料は、精神的な苦痛に対して被害者が被疑者に対して請求する、民事上の金銭の支払いになります。
撮影機器を使った盗撮で迷惑防止条例違反となった場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられます。しかし、示談交渉が締結し不起訴処分となった場合は、そういった刑罰は受けずに、示談金の支払いのみという事になります。
盗撮に適用される法令と罰金相場
盗撮事件は、盗撮の場所や方法によって刑罰が異なります。基本的には、下記4つのどれかに該当します。
①迷惑防止条例違反
駅のエスカレーターや電車内など、公共の場で盗撮をした場合は、迷惑防止条例違反に該当します。
各都道府県によって罰則が異なり、東京都の場合は下記のようになります。
行為 | 罰則 |
盗撮目的で撮影機器を設置した場合 | 6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
撮影機器で盗撮をした場合 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
常習的に盗撮をしていた場合 | 2年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
②軽犯罪法違反
公共の場所以外で盗撮をした場合は、軽犯罪法違反に該当します。学校・会社内のトイレ・カラオケボックスの個室・会社内・タクシーの車内などで「のぞき行為」をしたことに対しての罰則となり、拘留(1日以上30日未満の拘束)又は科料(1,000円以上10,000円未満の罰金)が課せられます。
③住居侵入罪や建造物侵入罪
また、盗撮目的で勝手に住居や店舗に立ち入った場合には、「住居侵入罪」や「建造物侵入罪」の処罰対象になる場合もあります。「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」が課せられます。
④児童ポルノ禁止法
盗撮をした相手が18歳未満だった場合、「児童買春・児童ポルノ禁止法違反」の罪に問われます。
児童ポルノを製造したとされた場合の罰則は、「3年以下の懲役」または「300万円以下の罰金」と定められています。
慰謝料(示談金)の交渉を弁護士に依頼するメリット
刑事事件の段階で被害者としっかりと示談交渉をしておくことで、後々のリスクを回避できます。
当事者同士の示談交渉は、高額な請求が来たり交渉が長引くケースもあり得ますので、刑事事件の経験が豊富な弁護士に依頼して、確実・迅速に進めてもらうことが大切です。
被害者の立場からすると、自分を盗撮した加害者と直接交渉をすることは恐怖心もあり難しいでしょう。
大明法律事務所では、経験豊富な弁護士により盗撮事件を不起訴に導いた事例が多くあります。中には、盗撮をして200万円を請求され困っていたが、弁護士の交渉により50万円の示談金で解決した事例などもあります。
▶︎いわゆるデリヘルで盗撮をしてしまったケース
→200万円の請求を受けたものの、50万円の示談金の支払うことで解決。
▶︎風俗店で盗撮をしてしまったケース
→300万円を請求されたものの、弁護士の介入により、20万円で示談となり、警察にも通報されずに解決。
▶︎ショッピングモールのエスカレーターで現行犯逮捕されてしまったケース
→取り調べを受け、3日後に釈放されてから弁護士に依頼をして、被害者と示談をして不起訴になった。
盗撮事件の損害賠償(慰謝料)に時効はある?
盗撮行為を受けた被害者は、民事上の不法行為として損害賠償を請求する権利を持っていますが、注意が必要なのは、慰謝料の請求には時効が設けられているという点です。
民法上、盗撮などの不法行為に対する損害賠償請求は、「被害者が、損害及び加害者を知った時から3年間行使しない場合は、時効を迎える」とされています。
盗撮の慰謝料請求に関わるポイントは2つあります。
(1)起算点
慰謝料請求の時効を計算するとき、起算点は「損害及び加害者を知った時から3年間」です。
被疑者が盗撮をして現行犯逮捕された場合は、被害者もその場に居合わせているため、事件は発生した日が起算日となります。しかし逮捕後に余罪が発覚し、他の被害者が「損害及び加害者」を知った場合は、その知った日が起算日となります。
3年以上前の盗撮事件を今日知ったとすれば、今日から3年間慰謝料の請求ができることになります。
(2)民事上の時効は、罪にかかわらず3年
刑事事件の場合は、「迷惑防止条例違反は3年」「軽犯罪法違反は1年」と罪によって時効が異なります。しかし、被害者の精神上の苦痛は罪に関係なく平等に扱われるため、不法行為に対する損害賠償請求の時効は3年となっています。
まとめ
今回は、盗撮事件の慰謝料(示談金)の相場や高額になるケースなどをご説明しました。
慰謝料については、被害者と加害者の間で金額の決定や支払いを行うよりも、弁護士を介して適切な対処をしてもらう事でトラブルになるリスクをなくすことができます。
当事務所には、盗撮事件の慰謝料を減額し不起訴処分を獲得した経験が多くありますので、少しでもお困りのことがありましたら、ご気軽にご相談ください。