盗撮の証拠になるものとは。証拠があると必ず起訴されるのか?
目次
盗撮の証拠として、撮影した写真や動画が思い浮かぶ人が多いかもしれませんが、それだけではありません。
逮捕に繋がるような証拠にはどのようなものがあるのか、証拠があると必ず起訴されてしまうのかなど、ご説明します。
盗撮の証拠になるものとは?
盗撮の証拠になるものは、大きく分けて5つあります。
(1)盗撮した写真・動画
盗撮に使ったカメラやスマートフォンに、撮影した写真・動画のデータが残っていた場合は、もちろんですが重要な証拠となります。また、撮影に使われた機器自体も、証拠として扱われます。
また、盗撮で逮捕されるケースは、ほとんどが初めての犯行ではないと言われています。そのため、警察は常習的に行っていないか、余罪はないかどうかを、追求してくるでしょう。
押収されたカメラやスマートフォンから過去の盗撮が判明することもあり、余罪で更に罪を問われるケースもあります。
(2)盗撮のために仕掛けたカメラ
盗撮のために更衣室やトイレに仕掛けたカメラが見つかり、被害届が出されて警察の捜査が始まるケースもあります。
この場合は、カメラの持ち主が犯人だと推測されますが、カメラを仕掛けた時に自分の姿が写り込んでいる場合もあります。仕掛けた場所から個人の特定もされやすく、逮捕に繋がりやすくなると言えます。
(3)被害者・目撃者の証言
電車内や公共の場所での盗撮が見つかり、逃げて現行犯逮捕はされなかったとしても、被害者や目撃者の証言が重要な証拠となり、犯人が特定されるケースもあります。
犯人の顔・体の特徴・服装などが証言の内容になりますが、人によるものなので確実に合っているかどうかは判断が難しくなります。複数人の整合性はあるか、虚偽の証言の可能性はないかなど、慎重に扱う必要がある証拠です。
(4)落とした持ち物など
盗撮をしている時に被害者や周りの人に見つかり、焦って逃げている時に持ち物を落としてしまうケースもあります。落としたものが財布であれば身分証やカード、定期券などから誰が落としたものなのかを特定できます。
しかし、「盗撮をしたことを証明する」には不十分なため、個人を特定した上で、任意で事情聴取をして、被疑者からの自白や供述と合わせて、証拠とすることが多いようです。
(5)被疑者の自白・供述
被疑者本人からの自白や供述は、極めて重要な証拠となります。
しかし刑事訴訟法では、被疑者本人の自白だけで有罪とすることはできないと規定されているため、他の証拠を合わせて裁判で審議されることとなります。
盗撮の証拠が見つかると必ず起訴される?
盗撮の証拠が見つかったとしても、必ず逮捕・起訴されるというわけではありません。
被疑者を起訴するかどうかは、検察官が決定権を握っています。起訴後の有罪率99%の日本では、検察官が起訴すべきと判断すれば、高確率で有罪となり前科がつくことになります。
例えば「迷惑防止条例違反」となれば、東京都の場合は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が課せられます。
初犯であれば、裁判を簡略化した略式起訴を経て罰金刑となることが多いですが、余罪が見つかり、常習と認められれば、2年の懲役が課せられる可能性もあります。
どちらにしろ、前科が付き家族や職場に影響が出ることは免れられないため、不起訴処分を得る対処をする必要があります。
加工された写真や動画は証拠になる?
近年、写真や動画の加工技術が進み、実際に撮影されたかのように改ざんすることが容易になりました。
しかし、裁判で扱われる証拠は、加工が疑われるものだとしても、裁判官の裁量により証拠価値を判断されることになります。
裁判相手が提出した写真・動画が加工されていたり、身に覚えのないものだったりする場合は、判決に関わる重要な証拠となってしまう可能性があるため、裁判所に証拠価値がないと主張したほうがよいでしょう。
また、肉眼では加工してあるかどうか判断しづらい場合は、専門の機関に鑑定依頼をすることもできます。もし無実だったとしても、加工された証拠物で有罪となってしまえば、その後の人生に大きな影響を与えてしまいますので、コストはかかってでも証明することをおすすめします。
写真や動画を消しても罪に問われる?
仮に盗撮した写真や動画を削除していたとしても、ほとんどは復元できてしまいますので、罪を問われる可能性は高いです。
端末から完全に削除されていたとしても、スマートフォンなどで撮影したデータがクラウドに同期されていた場合は、通信会社へ問い合わせることで、写真・動画の確認ができてしまいます。
更に、盗撮のデータを消した(=証拠を隠滅した)ことが警察に知られると、刑事裁判で不利な状況となりかねないため、盗撮した写真やデータを隠すことはしない方が良いでしょう。
盗撮に失敗していても罪になる?
盗撮をしようと人やスカートの中にカメラを差し向けたけれど、結果的に撮影はしていない、という場合では、罪になるのでしょうか。
公共の場所での盗撮行為については、各都道府県が定める迷惑防止条例がそれぞれ該当しますが、「盗撮をしようとカメラを差し向ける」行為については、該当するかどうかにばらつきがあります。
東京都・神奈川県・大阪府などは、盗撮目的でカメラを差し向ける行為も条例違反になります。盗撮行為がどの都道府県で行われたかによって、罪になるかならないかが分かります。
盗撮の証拠が見つかっても起訴されないためには
先ほどもご説明した通り、起訴後の有罪率は99%となっており、起訴されるとほとんどが有罪となってしまいます。では、起訴されないためにはどうしたら良いのでしょうか。
有効な方法としては、被害者との示談交渉があります。示談金を支払うことで、その刑事事件については一切を終了とし、被害届を取り下げてもらう方法です。
起訴するかどうかは検察官が決めることになりますが、被害者との和解が成立していることを考慮して、不起訴処分となる可能性も高まります。
しかし被害者との直接の示談交渉はできないケースも多くあります。実際に、盗撮被害を受けて精神的なダメージを負っていますし、被疑者と交渉することに抵抗があるのは当たり前なことです。
そこで、第三者として弁護士に示談交渉をしてもらうことで、冷静に対処することができ、示談交渉の成立と不起訴処分を得やすくなります。
盗撮をしてしまう理由とは
盗撮は、犯罪行為の中でも常習性の高いものと言われています。また、一度有罪となった後も、繰り返し盗撮をしてしまう再犯率も高い犯罪です。
そもそも盗撮をしてしまう動機にはどういうものがあるのでしょうか。
(1)性的な興奮のため
下着や着替える姿など、他人の性的な姿を覗き見ることによって快感や興奮を覚えるために、盗撮をするケースがあります。
このような場合、常習性は少なくほんの出来心や酔っ払った勢いで盗撮をしてしまうことが多いようです。
(2)スリルを味わいたいため
初めは性的な目的で盗撮していたが、「してはいけないことをしている」「バレないかハラハラする」というスリルを味わうために盗撮しているケースもあります。
家庭や職場でのストレスや、自尊心を満たしたり、日常にない刺激を求めて盗撮をしてしまうようです。
(3)盗撮行為が犯罪だと認識していないため
盗撮を犯罪行為だと認識していないケースも稀に見受けられます。
盗撮をされるような服装をしているから当たり前だ、女性になら盗撮しても良いと考えているようですが、誰に対して盗撮を行なっても犯罪は犯罪です。
窃盗や障害のように、本人に物理的なダメージはなくても、自分の性的な写真や動画が世の中に残ること自体が不快感を覚えるのは当然で、精神的なダメージを負います。そういった認識がなく、盗撮行為を繰り返してしまうこともあるようです。
(4)病理化しているため
犯罪行為とわかっていても、中毒のように繰り返し盗撮をしてしまう場合は、精神的な疾患や病理化している可能性もあります。
例えば、他人が誰からも見られていないと思っている空間で、服を脱いだり裸でいる姿を見て興奮を覚える「窃視障害」というものがあります。こっそり覗いているという行為自体に興奮を覚えるものです。
自分の意思でやめることは難しいため、カウンセリングや服薬で治療する必要があります。
まとめ
今回、盗撮事件の証拠となる5つのケースや、起訴されないためにどうしたら良いかなどをご説明しました。
盗撮をしてしまい逮捕されないか不安を抱えている、被害者との示談交渉ができず起訴されそうで悩んでいるなど、刑事事件に関する悩みは弁護士に相談することでスムーズに対処することができます。
ほんの小さな悩みでも、専門家に頼ってみることをおすすめします。