執行猶予とは? | 福岡の刑事事件に強い弁護士に無料法律相談 | 弁護士法人 大明法律事務所
まずはお気軽に
ご相談ください
365日24時間対応
tel 電話で相談 e-mail メールで相談 line LINEで相談
ホーム > 刑事事件解決法 > 刑事事件コラム > その他 > 執行猶予とは?

執行猶予とは?

執行猶予とは?

①意義

刑の執行猶予というときの「猶予」とは、一定の期間刑の執行を実施しないということを意味します。そのため、執行猶予とは、刑の言渡しをした場合に、情状によって一定期間内、刑の執行を猶予し、当該期間を経過した場合は、刑の言渡しの効力を失わせ、刑罰権を消滅させる制度をいいます。
刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しはその効力を失います(刑法(以下略)27条)が、執行猶予の期間内にさらに罪を犯すなどした場合、刑の執行猶予が取り消され、刑が執行されることになります。この時、猶予されていた期間はもちろんですが、新たに犯した罪に関する刑期も加算されるため、長期間の刑が執行される可能性が高くなります。
なお、執行猶予はあくまで「刑の猶予」であって、刑自体が消えるというわけではありません。そのため、仮に猶予期間を満了しても、宣告された刑が消えるわけではないため、執行猶予付きの判決が出た場合、それは「前科」として残ることになります。

②趣旨

犯罪者を施設に収容し、社会から断絶させることは、治安維持の観点や犯罪者更生の観点から、妥当と言えます。しかし、一方で、犯罪者から社会性を失わせるおそれもあります。仮に施設から出所したとしても、社会に馴染めないことにより、再び罪を犯すことにもなりかねません。
また、「刑務所帰り」ということについて、未だ社会の偏見が強いことは否めません。そのため、本人がいかに努力したとしても、周囲からの支援が望み難く、社会復帰が容易ではないという実情もあります。
加えて、他の受刑者と接触しうる環境というのは、悪影響を及ぼしかねません。そのため、犯罪者更生のための施設収容が、かえって犯罪傾向を進めさせることにもなります。
そのため、執行猶予の趣旨は、刑罰を科すことにより生じる上記弊害を避けるとともに、条件に反した場合は刑が執行されるという心理強制により、犯人の自覚に基づく改善更生を図る点にあると言えます。

③種類

執行猶予には、刑の全部執行猶予と、刑の一部執行猶予とがあります。

④刑の全部執行猶予について

➊意義

刑の全部執行猶予とは、言い渡された刑の全部の執行が猶予されるものをいいます(25条)。

❷要件

初度目(初回)の執行猶予が認められるためには、
Ⅰ前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者、または、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者であること
Ⅱ3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金の言渡しを受ける場合であること
Ⅲ相当な情状があること
が必要となります(25条1項)。Ⅲの「情状」とは、犯罪そのものの情状のほか、犯罪後の状況も総合して、犯情が軽微であり、刑の執行を猶予することによって自主的に更生することが期待できると判断できるような事情をいいます。そのため拘留や科料の場合は、執行猶予は認められないことになります。
一方、再度(=前に禁錮以上の刑につき、その執行が猶予され、猶予中の者が、さらに罪を犯した場合)の執行猶予となる場合、執行猶予が認められるためには、より厳格な要件を満たす必要があります。すなわち
Ⅰ1年以下の懲役・禁錮が言い渡された場合であること
Ⅱ情状に特に酌量すべきものがあること
が必要となります(25条2項)。②につき、罰金の場合は、再度の執行猶予が認められないことになります。
また、25条の2第1項により、刑の執行猶予の言渡しの際に保護観察に付されながら、保護観察期間内にさらに罪を犯した場合は、たとえ上記の2つの要件を満たすとしても、その罪に対する刑の言渡しの際に執行猶予を認めることはできないということになります(25条2項但書)。ただし、保護観察期間内であっても、保護観察の仮解除を受けた場合、それが取り消されるまでの間は、保護観察に付されなかったものとみなされます(25条の2第3項)。
初度目の執行猶予を言い渡された者については裁判所の裁量により保護観察が付されます。また、再度の執行猶予を許された者については必ず保護観察が付されます(25条の2第1項)。これを保護観察付執行猶予といいます。保護観察を付すことにより、犯罪者を施設に収容せず、社会の中で通常の生活を営ませながら、指導監督し、補助援助することによって、改善更生を図っていきます。

➌執行猶予の期間

執行猶予の期間は、裁判確定日から1年以上5年以下とされています(25条1項)。その範囲内において、裁判所が裁量によって具体的期間を定めることになります。
執行猶予は、「被告人を懲役1年に処する。この裁判確定の日から2年間その刑の執行を猶予する」というように、刑の言渡しと同時に、判決または略式命令によって言い渡されます(刑事訴訟法333条2項、461条)。

➍執行猶予の取消し

執行猶予は、取り消されることもあります。執行猶予の取消しには、必ず取り消さなければならないとする必要的取消しと、裁量によって取り消すこととする裁量的取消しがあります。
必要的取消しについて。
Ⅰ執行猶予の期間内にさらに罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑につき執行猶予の言渡しがないとき
Ⅱ執行猶予の言渡し前に犯した他の罪につき禁錮以上の刑に処せられ、その刑につき執行猶予の言渡しがないとき
Ⅲ執行猶予の言渡し前に他の罪につき禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき
のいずれかの場合に該当するときには、「執行猶予の言渡しを取り消さなければならない」とされています(26条)。
一方、裁量的取消しについて。
Ⅰ「執行猶予の期間内にさらに罪を犯し罰金に処せられた」とき
Ⅱ「保護観察に付された者」が遵守事項(更生保護法50条以下)を遵守せず、「その情状が重い」とき
Ⅲ執行猶予の言渡し前、他の罪につき禁錮以上の刑に処せられその執行を猶予されたことが発覚したとき
のいずれかの場合に該当するときには、裁判所の裁量によって、執行猶予の言渡しを取り消すことができるとされています(26条の2)。
なお、執行猶予の取消しは、検察官の請求により、裁判所の決定によって行われます(刑事訴訟法349条・349条の2)。

⑤刑の一部執行猶予について

➊意義

刑の一部執行猶予とは、言い渡された刑の一部の期間のみ受刑し、残りの期間は刑の執行が猶予されるものをいいます(27条の2)

❷要件

一部執行猶予が認められるためには、
Ⅰ以下に該当しうる者であること
・前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
・前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
・前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日またはその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者であること
Ⅱ3年以下の懲役または禁錮の言渡しを受ける場合であること
Ⅲ犯情の軽重および犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められること
が必要となります(27条の2第1項)。

➌執行猶予の期間

執行猶予の期間は、1年以上5年以下とされています。刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消されることなく、猶予期間を経過したときは、執行が猶予されなかった部分の期間の執行を終わった日またはその執行を受けることがなくなった日に、刑の執行を受け終わったものとされます(27条の7)。
一部執行猶予された刑については、執行が猶予されなかった部分の期間を執行し、当該部分の期間の執行を終わった日またはその執行を受けることがなくなった日から、猶予期間を起算していきます(27条の2第3項)。
また、刑のうち執行が猶予されなかった部分の期間の執行を終わり、または、その執行を受けることがなくなったとしても、他に執行すべき懲役または禁錮がある場合、猶予期間は、執行すべき懲役もしくは禁錮の執行を終わった日またはその執行を受けることがなくなった日から起算していきます(27条の2第3項)。
なお、猶予期間中、保護観察を付すことはできます(27条の3)。

➍執行猶予の取消し

必要的取消しについて。
Ⅰ猶予の言渡し後にさらに罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられたとき
Ⅱ猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられたとき
Ⅲ猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないことが発覚したとき
のいずれかの場合に該当するときには、「刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない」とされています(27条の4)。ただし、③については、猶予の言渡しを受けた者が、27条の2第1項第3号に掲げる者であるときは、必ずしも、言渡しが取り消されるということにはなりません。
裁量的取消しについて。
Ⅰ猶予の言渡し後にさらに罪を犯し、罰金に処せられたとき
Ⅱ27条の3第1項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守しなかったとき
のいずれかの場合に該当するときには、裁判所の裁量によって、執行猶予の言渡しを取り消すことができるとされています(27条の5)。
刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消したときは、執行猶予中の他の禁錮以上の刑についても、その猶予の言渡しを取り消されることになります(27条の6)。

⑥実際の運用

令和2年版犯罪白書(http://www.moj.go.jp/content/001338445.pdf)によると、令和元年では、起訴された28万2844人のうち、有期懲役・禁錮に処された人は4万9162人にのぼります。このうち、刑の全部執行猶予となった人は3万1065人にのぼります。また、実刑が科された1万8097人のうち、一部執行猶予となった人は1452人にのぼります。
以上から、懲役や禁錮が科されたとしても、約66%の人は、刑の猶予を受けている計算となります。

刑事事件解決法へ戻る