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拘禁刑とは?

2022年6月13日に、改正刑法が可決成立しました。この改正により
・「侮辱罪」(刑法(以下略)231条)の厳罰化
・拘禁刑の創設
がなされることになりました。今回は、拘禁刑についてまとめていきます。
(以下、明文していない場合は、旧刑法を指します)

改正の概略

従来、日本における刑の種類には、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収といったものがありました(9条)。このうち、自由刑(受刑者を拘禁してその自由を剥奪することを内容とする刑罰)にあたるものとして、懲役、禁錮、拘留の3つがありました。
 今回の改正によって、「懲役」と「禁錮」を廃止し、2つの刑を一本化した「拘禁刑」というものを新たに創設する運びとなりました。

懲役と禁錮の共通点・相違点

 懲役と禁錮は、いずれも刑事施設(刑務所、少年刑務所)に拘置することによって執行される(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律2条・3条1号)点で共通しています。また、懲役と禁錮には、いずれも無期と有期の場合があるという点で共通しています。
一方、懲役が、「所定の作業」が課せられるのに対し、禁錮は、「所定の作業」が課せられない
という点で違いがありました(12条2項・13条2項)。

拘禁刑を創設するに至った経緯

懲役を含む、刑罰の本質については、従来より

・犯罪に対する応報という考え方
・刑罰を科すことにより社会の一般人を威嚇し、将来の犯罪を予防するという考え方
・犯人を改善し、犯人が将来に再び犯罪を行わないようにするという考え方

がありました。
そのため、懲役の趣旨というのは、罪を犯した人に施設への隔離という制裁を加えることで反省を促し、施設内における生活や作業を通して矯正し、改善更生及び円滑な社会復帰を図る一方、社会に対しては秩序維持と犯罪抑止を狙う点にあるということになります。

懲役と禁錮は執行面で実質的に変わらないのが現状

 懲役で課されている「所定の作業」とは、刑務作業(=刑事施設に拘置して所定の作業を行わせること)を指し、ここには、生産作業・社会貢献作業・職業訓練・自営作業の四種類が含まれています。そして、懲役刑の受刑者は、1日8時間以内の時間で「所定の作業」に就業しています。そのため、従来から、作業に時間が割かれているため、再犯防止指導に対して十分な時間が充てられていないと指摘されていました。
 また、禁錮については、該当者が少なく、従来より、活用されていないことが指摘されていました。
 このように、懲役については、「犯罪に対する応報という考え方」から「犯人を改善し、犯人が将来に再び犯罪を行わないようにするという考え方」へとシフトしていること、及び、禁錮については、活用されていない現状というものに鑑み、この度、「懲役」と「禁錮」を廃止し、2つの刑を一本化した「拘禁刑」を創設するに至ったということになります。

禁錮を科される犯罪のほとんどが過失犯

現在、禁錮を科される犯罪のほとんどが過失犯であることも、禁錮という刑を設けた意味を薄れさせています。

■禁錮は政治的信念に基づく犯罪を主眼に設けられた刑

懲役は、殺人・強盗・放火など道徳的に非難される犯罪に対する刑です。
これに対して禁錮は、政治犯や過失犯といった、秩序維持のための取り締まりの必要上、犯罪とされている行為への刑という違いがあります。

特に、内乱罪(刑法77条)や公務執行妨害罪(同法95条)のような政治的信念に基づく犯罪については、犯人の信念と名誉を重んじ、刑務作業に服させるべきでないという考えから、禁錮を科すことができるようになっています。

そして、政治的信念に基づく犯罪に禁錮を科すことこそが、禁錮という刑を設けた主眼であると考えられてきました。

■禁錮を科されるのは過失犯がほとんどであるのが実状

ただ、現在は、禁錮を科される犯罪のほぼ全てが過失犯です。

たとえば、令和2年に全国の地方裁判所で禁錮の言い渡しを受けた2,735件のうち2,734件(99.9%)は、

・失火罪
・過失傷害罪
・自動車運転死傷処罰法違反

といった過失犯で占められています(「令和2年司法統計年報 刑事編」より)
こうした現状は、懲役の他に禁錮という刑を設けた本来の意味が薄れていることを示すものといえるでしょう。

内容

前提として、懲役刑と禁錮刑の存在がなくなることから、刑法で規定されている犯罪類型を筆頭に、様々な犯罪の法定刑が変更されるということになります。

改正刑法12条は、「拘禁刑は、無期及び有期とし、有期拘禁刑は、一月以上二十年以下とする」と改められる予定となっています。また、改正刑法12条には、「拘禁刑は、刑事施設に拘置する」「拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる」という項が追加される見込みとなっています。
「できる」という文言ぶりから、拘禁刑者への刑務作業は義務ではなくなります。刑務作業は、受刑者が「改善更生を図るため」に必要なときに限られるということになります。また、これに付随して、刑務作業は、受刑者に合わせて科すことができることになるため、再犯防止のため、より柔軟な対応をとることが可能となると言えます。

公布

 現状、改正刑法は、2025年に施行される見込みとなっています。

まとめ

 今回の法改正による拘禁刑導入の主な目的は、受刑者を改善更生させ、その社会復帰を図ることにあります。
 そして、罪を犯した者の改善更生を図るのであれば、刑務所収容の時からだけでなく、捜査や裁判の段階においても、個々の特性に応じた対応が大切になってきます。

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