起訴とは?不起訴とは?
起訴とは・不起訴とは
一般に、起訴とは裁判にかけることを言います。一方で、不起訴とは起訴しないことを言います。もっとも、民事訴訟と刑事訴訟で異なる部分があります。
民事訴訟は、私人が裁判所に対して申し立てることにより開始します。そのため、私人がいかなる紛争につき、誰と争っているのかを明らかにした上で、申し立てなければなりません。このことは、民事訴訟法133条において、訴状の記載事項という形で現れていると言えます。即ち、何かしらの紛争があったとしても、私人が申し立てない限り、裁判となることはありません。
刑事訴訟は、刑事訴訟法247条により、検察官が起訴権限を独占しています。そのため、刑事事件においては、私人が裁判所に対して申し立てることは認められていません。また、検察官には起訴するか否かに関し、広範な裁量が認められています。そのため、検察官が起訴しないと判断することも認められています。これが不起訴です。
不起訴処分となった場合、刑事裁判にかかることにはなりません。そのため、不起訴処分をもって、事件は終結したことになります。裁判が行われない以上、有罪判決が下されることはありません。そのため、前科持ちとならないということになります。また、職場との関係においても、懲戒解雇等の処分を回避できる可能性がでてきます。
不起訴処分は、大きく3つに分類することができます。1つは「嫌疑なし」です。これは、捜査の結果、被疑者に犯罪の疑いがないと判断された場合を指します。
次に「嫌疑不十分」です。これは、捜査の結果、裁判で有罪と証明することが困難と判断された場合を指します。
最後に「起訴猶予」です。これは、捜査の結果、有罪を証明することが可能でも、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重・情状、犯罪後の情況等を考慮し、起訴が必要とされる場合を指します(刑事訴訟法248条)。
以上のように、不起訴処分には、いくつかの種類があります。しかし、検察官は、事件につき不起訴処分をした場合、被疑者の請求があるときは、速やかに不起訴処分の旨を告げなければならない(刑事訴訟法259条)ですが、その理由まで告げることは要求されていません。
一方、告訴、告発又は請求のあった事件について、公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をした場合、検察官は告訴人、告発人又は請求人にその旨を伝える義務がありますが、その理由は、請求がない限り、告げなくていいとされています(刑事訴訟法260条前段、261条)。
そこで、不起訴処分に不服のある被害者や告訴人等を救済する必要が出てきます。具体的には、不起訴処分の当否について、検察審査会に審査の申立てをすることが認められています。これを、検察審査会制度と言います。
また、特に不当な不起訴処分がなされ得る可能性のある、公務員の職権濫用等の罪(刑法193条以下)について、不起訴処分に不服がある場合、告訴又は告発をした者は、不起訴処分を下した検察官所属の検察庁の所在地を管轄する地方裁判所に、事件を裁判所の審判に付することを請求することができます。これを付審判請求手続と言います。