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被害届とは

意義

 被害届とは、犯罪による被害事実を申告する書面を言います。
検察官、検察事務官及び司法警察職員といった捜査機関は、犯罪があったと思われる兆候(以下、「捜査の端緒」)がある場合に、捜査を開始します。犯罪があったと思われる兆候は多種多様にありますから、捜査機関は、法律によって禁止されていない限り、あらゆる方法を利用して、捜査の端緒を探知しています。警察官が犯罪の捜査を行うに当たって、守るべき心構え、捜査の方法、手続その他捜査に関し必要な事項を定めている犯罪捜査規範でも、「新聞紙その他の出版物の記事、インターネットを利用して提供される情報、匿名の申告、風説その他広く社会の事象に注意するとともに、警ら、職務質問等の励行により、進んで捜査の端緒を得ることに努めなければならない」と規定されています(犯罪捜査規範59条参照)。
 一方で、市民による活動も、捜査の端緒となり得ます。例えば、告訴(刑事訴訟法230条)、告発(刑事訴訟法239条)、請求及び自首(刑事訴訟法245条)といったものは、まさに犯罪があったという兆候になりますから、捜査の端緒となり得ます。また、現行犯逮捕であれば私人によることも許容されています(刑事訴訟法212条・213条・214条参照)。現行犯はまさに罪を犯した人ですから、捜査の端緒となり得ます。
 被害届も、犯罪による被害事実があったことを申告し、捜査機関に犯罪の存在を認識してもらうものですから、捜査の端緒となり得ます。なお、客観的真実に反する告訴・告発その他の申告をした場合、これが自分以外の者に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的であれば、虚偽申告罪(刑法172条)が成立します。そのため、虚偽の被害届を提出した場合、虚偽親告罪が成立しうると言えます。

類似概念との相違点

 被害届と似たようなものとして、告訴状というものがあります。告訴とは、犯罪の被害者その他法律上特に権限を与えられた者が、捜査機関に犯罪による被害事実を申告して、犯人の訴追を求める意思表示を言います(刑事訴訟法230条参照)。そのため、告訴する旨を記載した書面が告訴状ということになります。
被害届と告訴状は、犯罪による被害事実を申告する点で共通しています。しかし、告訴には、犯人の訴追を求める意思(=犯人を処罰してほしいという意思、訴追意思)も含まれています。そのため、告訴状が正式に受理されると、事件は検察官に送付されることになります(刑事訴訟法242条、犯罪捜査規範67条)。また、起訴不起訴にかかわらず、この旨の処分をした場合は、速やかに、その旨を告訴人、告発人又は請求人に通知することが求められ(刑事訴訟法260条)、公訴を取り消した場合や、事件を他の検察庁の検察官に送致した場合も、速やかに、その旨を告訴人、告発人又は請求人に通知することが求められます(刑事訴訟法260条)。そして、不起訴とした場合に、告訴人、告発人又は請求人の請求があるときは、速やかに告訴人、告発人又は請求人に不起訴処分とした理由を告げなければならないとされています(刑事訴訟法261条)。従って、訴追意思の有無というのが被害届と告訴状の違いの1つと言えます。
 また、告訴については、告訴権者や告訴期間についても、規定が設けられています(告訴権者については、刑事訴訟法230条から234条、告訴期間については刑事訴訟法235条)。加えて、告訴状の書式に告訴人の欄が用意されていることも踏まえると、告訴状を提出できるのは、刑事訴訟法所定の告訴権者になると思われます。この点、後述しますが、被害届については提出権者も提出期間についても、明文規定はありません。

・提出期限

 被害届は、公訴時効(訴追されていない一定の時間の経過を理由に、国家刑罰権を消滅させる制度)が完成するまでの間であれば提出することができます。ただし、公訴時効の趣旨が①時の経過とともに、証拠が散逸してしまい、起訴して正しい裁判を行うことが困難になること②時の経過とともに、被害者を含め社会一般の処罰感情等が希薄化すること③犯罪後、犯人が処罰されることなく日時が経過した場合には、そのような事実上の状態が継続していることを尊重すべきことにある以上、有力な証拠の散逸による証拠収集の困難や処罰感情の希薄化を防止するため、可能な限り早めに提出すべきだと言えます。
これに対して、告訴については、犯罪事実が親告罪というものに当たるか否かで変わってきます。親告罪とは、告訴がなければ検察官が起訴できない類型の罪を言います。罪を犯した者が全員有罪というわけではなく、起訴により有罪判決が出され、判決が確定しなければ刑事処分が科されることはありません。そのため、親告罪においては、告訴状を提出するか否かが、検察官の起訴ひいては被疑者への刑事処分を決めることになります。
 親告罪については、一定の罪を除いて「犯人を知った日から6ヶ月以内」に告訴しなければなりません。従って、親告罪の告訴状もその期間内に捜査機関に出す必要があります。

・提出権者

 告訴権者は刑事訴訟法で規定されています。一方、被害届は、犯罪による被害事実を申告するものですから、基本的に犯罪の被害者が提出することが想定されていますし、実際、犯罪の被害者が提出するというのがほとんどです。
もっとも、被害届の書式においては、「届出人」と「被害者」は区別されています。そのため、犯罪の被害者以外の者であっても、被害届を提出することはできます。

手続

 被害届の受理までには、細かく分けると①被害届の入手、②被害届への記入、③被害届の提出、④受理の4段階があると言えます。

入手

 被害届は、警察署や交番に用意されています。また、被害届の書式は、犯罪捜査規範で決まっています。そのため、インターネットで検索すると、書式を見ることができます。

記入

「警察署や交番に行って、用意されている被害届に書くだけ」というわけではありません。
警察官に詳しく事情や身元等を確認され、被害事実があったということにつき、ある程度信憑性が認められると判断されて、始めて、警察官の目の前で、被害届へ記入することになります。そのため、警察官に対し被害内容についてきちんと説明できなければ、被害届への記入が許されないといったことにもなりかねません。

そのため、予めインターネットで被害届の書式を検索し、被害届へ記載することが求められている内容に関するメモを作成した上で、警察署や交番にメモを持参することをお勧めします。そのうえで、予め用意したメモについても説明し、警察官へ被害事実について話し、被害届へ記入することになると思われます。ほかにも、身元確認のための身分証明書(免許証やパスポートなど)や印鑑を持参することもお勧めします。

捜査機関は被害届を捜査の端緒として捜査活動を開始することから、当然ながら、被害届を通じて、捜査機関に被害事実を分かりやすく伝えるということは重要になります。被害届に記載する内容に事件性が認められるものでない場合、被害届が受理されないということも十分にあり得ます。そのため、被害届には、記憶のある限り警察官に被害事実を正確に記入することが必要になってきます。

被害事実を正確に記入するには、

・だれが(誰が被疑者か、分からない場合はその特徴等)
・いつ(被害日時・時間帯)
・どこで(被害場所)
・どんな方法・態様で
・どんな被害に遭ったのか(被害品・被害内容・被害程度)
・被害を見つけたきっかけ
・被害に至るまでの経緯
・被害状況・犯行態様等

といった事柄について、記入することが求められます。
そこで、被害届には、以下のような事柄について、記載をする欄が設けられています。

・届出人の住居、氏名、電話番号
・被害者の住居、職業、氏名、年齢
・被害の年月日時
・被害の場所
・被害の模様(被害を知った経緯、被害状況など)
・被害金品(品名・数量・時価・特徴・所有者)
・犯人の住居、氏名又は通称、人相、着衣、特徴等
・遺留品その他参考となるべき事項

被害届に記載する内容は、個々の被害内容・性質・特徴などにより異なります。例えば、窃盗罪(刑法235条)であれば、盗まれた財物や盗まれた日時場所等について記載することになると思われます。一方、殺人罪(刑法199条)であれば、被害に遭った日時場所や死因、如何なる方法だったかといったことになると思われます。
被害届に記載する事柄については、上記のように書式で定められています。しかし、「どういった文章で記載欄に書かなければならないのか」ということについては何も規定されていません。そのため、文章で書かなくとも、箇条書きでも問題ないということになります。

提出

 犯罪捜査規範では、「警察官は、犯罪による被害の届出をする者があったときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。」と規定されています(犯罪捜査規範61条1項)。そのため、被害届の提出については、管轄に関係なく提出できることになります。もっとも、事件が起きている管轄の警察署や交番に提出するのが自然だと思われます。なお、「犯罪による被害の届出」は「口頭」によることも可能となります(犯罪捜査規範61条2項)。
警察等の捜査機関へ被害届を提出する方法としては、大きく分けて3つ考えられます。

①被害者(あるいはその代理人)自身で被害届を作成し、その上で、警察署に出向いて提出するという方法
②被害者(あるいはその代理人)自身が警察署に出向いた上で、警察官の面前で被害事実を申告した上、警察官が聴き取った被害内容等を被害届に代書するという方法
③被害者(あるいは被害者とその代理人)が警察署へ出向いた上で、警察官の面前で被害事実を申告した上、警察官が聴き取った内容を被害届の代わりに供述録取書にまとめるという方法

「口頭」による「被害の届出」があった場合、警察官は、届出者に被害届の書式に記入させるか、警察官が聴き取った内容を代書するかといったことが選択できます。もっとも、この場合、参考人供述調書を作成した場合は、被害届の作成を省略することができます。
このように、口頭による届出を認めているにもかかわらず、犯罪捜査規範は書類化とすることを要求しています。その趣旨は、後の公判において、犯罪事実を認定する証拠として用いるためです(窃盗被害届書に記載された被害日時が自白の日時と異っていても、被害の場所、被害者、被害物件等窃盗の具体的な客観的事実の記載が自白と一致している場合には、被害届書を補強証拠とすることができることを認めた判例として、最判昭和24年7月19日)。そのため、警察官としても、いい加減な内容の被害届を受理することはできません。事前に記入して、被害届を出したとしても、警察官から不備を指摘され、書き直して再度出すことを検討するよう求められることもありえます。
 なお、事前に被害者(あるいはその代理人)自身が被害届を作成し、その上で、警察署に出向いて提出する場合、身元確認のための身分証明書(免許証やパスポートなど)や印鑑を持参することをお勧めします。ただし、証拠となりうる被害金品や遺留品等については、慎重になる必要があります。即ち、持参時に犯人の指紋等が消えてしまい、捜査活動に支障をきたす恐れがあるからです。これらについては、特に保全には気を使うべきと言えます。

受理

 上述の通り、「警察官は、犯罪による被害の届出をする者があったときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。」とされています(犯罪捜査規範61条1項)。「受理しなければならない」という文言で規定されていることを踏まえると、提出された被害届は、必ず受理されるというように読めると思われます。実際、被害届を適切に出した場合、警察も基本的には受理していると言えます。
 もっとも、あらゆる被害届が受理されるというわけではありません。例えば、明らかに虚偽の内容が記載された被害届や単なるいたずら・嫌がらせ目的で作られた被害届に対して、「受理しなければならない」となると、事件性・犯罪性を有していないにもかかわらず、警察の仕事をいたずらに増やし、ひいては、「事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現する」ことはもちろん、「公共の福祉」を維持し、「個人の基本的人権の保障」を「全うすること」を阻害しかねません(刑事訴訟法1条参照)。即ち、事件性・犯罪性が認められないような被害届は、犯罪による被害事実を申告する書面とは言えない以上、受理されません。
 また、仮に事件性・犯罪性が認められるとしても、犯行発生時から長時間経過している場合、証拠が散逸している可能性も否めないため、罪を犯したことを裏付けるほどの捜査が十分に行えないほか、申告した内容の信憑性も疑いがあると評価されることにより、被害届の受理をしないこともあります。他にも、事件性・犯罪性が認められるとしても、これらが極めて軽微な場合は、警察の人的資源や割け得る時間等を鑑みて、被害届の受理をしないこともあります。

 以上から、被害届の中身を検討した結果、警察が被害届の受理を断る場合も出てきます。そのため、警察に被害届を出す場合は、申告する被害事実に事件性・犯罪性が認められるか、仮に被害事実に事件性・犯罪性が認められるとしても、処罰の必要があるかが検討されるということは知っておく必要があるかもしれません。

効果

 上述した通り、被害届も、捜査の端緒となり得ます。そのため、被害届が受理された場合、被害事実に事件性・犯罪性があると思料され、犯人を処罰する必要があることを警察が認めたということになりますから、捜査手続へと移行することが可能となります。もっとも、捜査手続へ移行したからといって、直ちに被害事実に事件性・犯罪性が認められるということにはなりません。捜査手続を経て、検察が起訴とすべきか否かを判断し、被害事実に事件性・犯罪性が認められるかは裁判所が判断します。
 また、被害届の受理は、捜査手続への移行が可能となるだけであって、直ちに捜査手続に移行しなければならないということまでを効果とするものではありません。即ち、警察も人員が限られている以上、受理していた被害届に関する捜査を全て実行していれば、かえって能率が下がることが容易に想像できます。そのため、被害届を受理したとしても、いつから捜査に着手するかについては、警察の判断に委ねられています。犯罪捜査規範77条によると、「捜査の着手」は、「犯罪の軽重および情状、犯人の性格、事件の波及性および模倣性、捜査の緩急」等といった諸般の事情を判断し、「捜査の時期または方法を誤らないように注意しなければならない」とするのみで、直ちに捜査に着手しなければならない等といったことは規定されていません。
 もっとも、被害届が受理されてから捜査手続へ移行するまでに長時間かかった場合は、公訴時効の趣旨と同じようなことが妥当すると言えます。具体的には、時の経過とともに、証拠が散逸してしまい、起訴して正しい裁判を行うことが困難になります。その結果、社会からの信用を失いかねません。そのため、「捜査の時期または方法を誤らないように注意」することが要求されています。この点からも、被害届を提出する場合は、なるべく早く提出すべきだと言えるでしょう。万一、被害届が受理されたにもかかわらず、捜査手続きへ移行しているか不安になった場合は、警察に状況を聞いたり、場合によっては告訴を検討することが必要となります。告訴があった場合、「特にすみやかに捜査を行うように努め」なければならないからです(犯罪捜査規範67条柱書)。
 一方、被害届が受理され、捜査手続へ移行した場合、確実に取調べ等といった刑事手続に巻き込まれることになります。たとえば、捜査が開始された場合に、参考人として取調べを受けたり、実況見分(いわゆる現場検証)への立ち会いを求められたりすることがあります。ほかにも、事件が起訴されて、裁判となった場合、裁判所から証人を求められることがあります。その場合、裁判所からの要請に応じる義務が発生します(刑事訴訟法143条)。仮に、裁判所からの要請を拒否した場合は、10万円以下の過料(刑事訴訟法150条)や、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金(刑事訴訟法151条)が科されることもあります。

対応

 対応の方法としては、①被害届が提出される前と②被害届が提出された後の2つに場合分けすることができます。

被害届が提出される前の場合

被害届が提出されることを知る方法としては、主に

・被害者本人(あるいはその関係者)から「警察に被害届を出す」と警告された場合
・被害者の弁護士から「警察に被害届を出す」と警告された場合

の2つが考えられます。
そして、両者とも「示談して示談金、慰謝料を支払え」等といった条件を付けることが多いと思われます。
 これらのうち、後者は弁護士から警告されている以上、概ね被害届が提出され、受理される見込みが高いと思われます。これに対し、前者の場合は、被害届が受理される見込みは必ずしもありません。上述の通り、警察に被害届を出す場合は、申告する被害事実に事件性・犯罪性が認められるか、仮に被害事実に事件性・犯罪性が認められるとしても、処罰の必要があるかが検討されます。弁護士であれば、これらを検討した上での“警告”だと考えられますが、被害者本人あるいはその関係者はこれらを検討しきれているとは言い難いように思えます。翻ると、被害を受けたことに対し感情的になった故に警告しているだけに終わる可能性があるということになります。
 いずれの場合であっても、弁護士に相談して対応を検討することが必要になると思われます。仮に示談を結ぶべき状況であったとしても、示談金ないし慰謝料が相場を逸脱していることもあります。これらを踏まえても、弁護士に対応を求めるというのが最善になると思われます。

被害届が提出された後の場合

 被害届が提出された場合について知る際には、前提として、捜査手続の概要を知っておく必要があります。
被害届が提出されたとしても、上述の通り、必ずしも受理されるわけではありません。警察により検討の結果、被害届が受理されたとしても、直ちに捜査手続へ移行するというわけではありません。ですが、基本的には、被害届は受理され、捜査も開始されると思われます。
 捜査手続へ移行すると、事件現場等で収集した証拠や関係者から得た証言等から被疑者を特定する等といった作業が行われることになります。被害者が被害届を出す時点で被疑者が特定している、あるいは特定していなかったが「犯罪の捜査」によって特定した場合、「必要がある」と認められるとき、捜査機関は「被疑者の出頭を求め…取り調べることができる。」と刑事訴訟法で規定されています(刑事訴訟法198条本文)。もっとも、被疑者は「逮捕又は勾留されている場合」を除き、「出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる」とされています。そのため、「逮捕」等の身体拘束がなされていない場合、被疑者に対する取調べは、あくまで警察方から任意の協力を要請されて行われているものということになります。
 しかし、出頭を拒む等していると、警察としては、被疑者に逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがあると考えることになります。その結果、逮捕や勾留がなされることになります。
警察による捜査が終了すると、事件は警察から検察庁へ送致(送検)されます。その後は、検察庁での検察官による取調べを受けることになります。そして、取調べの結果等から、起訴するか否かが決まることになります。そして、起訴された場合、裁判を受けることになりますが、ほとんどの場合有罪判決となり、実刑ないし執行猶予付判決あるいは罰金等を支払うことになると思われます。
 被疑者としては、身柄拘束や有罪判決のリスクを避けるため、被害届が提出されたことを知ってから早い段階で、弁護士を選任し、代理人として被害者と示談交渉してもらい、示談を成立させることによって、被害届を取り下げてもらうことが必要になってくると思われます。では、被疑者が被害届を出されたと知るタイミングはあるのかが疑問になると思われます。しかし、警察が被害届を受理したとしても、被疑者はいつ被害届が提出されたのかを知ることはできません。被害届が提出され、受理されたことを知ることができるのは、出頭要請があったときや、逮捕・捜索されたときになることが多いです。
 従って、まずは弁護士を選任することが求められます。その後は段階に応じた適切な対応を弁護士に求めることになると思われます。たとえば、勾留決定前にできる活動というのは、勾留されないための活動ということになります。たとえば、事件の担当検察官に対して、勾留が不要であることを伝え、勾留請求を阻止する活動や、裁判官に対して、勾留が不要であることを伝えて、勾留決定を阻止する活動が考えられます。具体的には、被疑者勾留は、裁判官が被疑者に対し被疑事件を告げ、「これに関する陳述を聞いた後」になされます。そのため、「これに関する陳述」である、勾留質問の手続前に、令状担当の裁判官へ意見書を提出し、勾留請求の審査を厳格に行うことを求めたり、面談によって勾留請求を却下すべきと主張することになると思われます。
 また、勾留決定後にできる活動というのは、勾留の取消しや変更を求めるための活動ということになります。勾留されている被疑者は、裁判所に勾留の理由の開示を請求(刑事訴訟法207条1項、同82条1項)できますし、勾留されている被疑者の弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人も、請求できるとされています(刑事訴訟法207条1項、同82条2項)。これを受けて、理由の開示は「公開の法廷」で「裁判官及び裁判所書記」が列席し、裁判長により告げられます(刑事訴訟法207条1項、同83条1項2項、同84条1項)。この時、「検察官又は被疑者及び弁護人並びにこれらの者以外の請求者」は、意見を述べることができるとされています(刑事訴訟法207条1項、同84条)。この時、検察官や裁判長に対して、勾留の理由がないこと、勾留の必要性が乏しいことを具体的に伝える等して、勾留が不要であることを訴えかけることになると思われます。あるいは、勾留の取消し・執行停止や準抗告も考えられます。

まとめ

被害届は、犯罪による被害事実を申告する書面です。警察が被害届を受理すれば、捜査手続へと移行することが可能となります。もっとも、警察に被害届を出す場合は、申告する被害事実に事件性・犯罪性が認められるか、仮に被害事実に事件性・犯罪性が認められるとしても、処罰の必要があるかが検討されます。
 また、被害届を提出するほどの凶悪な事件においては、被害届の受理で全て終了するということにはなりません。むしろ、被害届が受理されてからがスタートになります。警察や検査による取調べや裁判が控えています。これらの手続の起点となる被害届は重要な役割を持っているということは理解しておく必要があると言えます。
 一方、被害届が提出されるかもしれないという場合、様々な局面が考えられますが、共通して言えるのは、弁護士をなるべく早く選任すべきだということです。被害届が受理されてからは警察や検査による取調べや裁判が控えていることや、これに付随して様々な局面が考えられる以上、刑事事件に精通する弁護士を選任し、状況に応じた最適解を導き出すことが重要になってきます。

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