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懲役とは?

意義

 刑法(以下略)によると、日本における刑の種類には、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収といったものがあります(9条)。このうち、懲役とは、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせることで、犯罪者の自由を剝奪する自由刑(受刑者を拘禁してその自由を剥奪することを内容とする刑罰)を言います(12条2項)。裁判所の有罪判決によって懲役(執行猶予が付される場合を除く)が確定すると、検察官によってその執行が指揮されます(刑事訴訟法471条以下)。
 懲役は無期懲役と有期懲役とに分かれます。有期の場合、1月以上20年以下の中で刑期が定められることになります(12条1項)。ただし、有期懲役を加重する場合、30年にまで上げることができますし、有期懲役を減軽する場合は1月未満に下げることができます(14条2項)。
 無期の場合は、文言通り、原則として期間の定めはありません。もっとも、無期懲役を減軽して有期懲役とすることも可能です。この場合、長期は30年となります(14条1項)。
無期および有期の懲役受刑者に改悛の状が認められる(=反省が見られる)ときは、地方更生保護委員会の決定により、刑期満了前に仮釈放が許されます(28条、更生保護法16条1号、39条1項)。もっとも、無期については10年、有期については刑期の3分の1の経過が必要となります。

趣旨

懲役を含む、刑罰の本質については
・犯罪に対する応報という考え方
・刑罰を科すことにより社会の一般人を威嚇し、将来の犯罪を予防するという考え方
・犯人を改善し、犯人が将来に再び犯罪を行わないようにするという考え方
があります。そのため、懲役の趣旨というのは、罪を犯した人に施設への隔離という制裁を加えることで反省を促し、施設内における生活や作業を通して矯正し、改善更生及び円滑な社会復帰を図る一方、社会に対しては秩序維持と犯罪抑止を狙う点にあるということになります。

同種制度との共通点・相違点

 日本において、自由刑は、懲役、禁錮、拘留の3つがあります(対して、罰金や科料は財産刑と言います。科料は1円以上1万円未満の納付であるのに対して、罰金は1万円以上の納付を言います)。
懲役と禁錮は、いずれも刑事施設(刑務所、少年刑務所)に拘置することによって執行される(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律2条・3条1号)点で共通しています。また、懲役と禁錮には、いずれも無期と有期の場合があるという点で共通しています。有期の場合、1月以上20年以下の中で刑期が定められることになります(ただし、刑の加重により、刑期を30年に至ることも可能ですし、減軽により1月未満に下げることも可能です(12条2項・13条1項・14条))。しかし、懲役が、「所定の作業」が課せられるのに対し、禁錮は、それが課せられないという点で異なります(12条2項・13条2項)。
懲役は、通常刑期が1月以上であるのに対して、拘留は、刑期が1日以上30日未満である点で異なります。また、懲役が、「所定の作業」が課せられるのに対し、拘留は、禁錮と同じく、作業が課されません。
従って、禁錮、拘留が刑事施設に拘置して刑を執行するだけであるのに対して、懲役は刑事施設に拘置して刑を執行するだけでなく、所定の作業(刑務作業)を行わせて執行することも含まれている点で違いがあります。

内容

所定の作業について

意義

規定は「所定の作業」という書きぶりですが、一般には刑務作業と呼ばれたりします。以下、法務省のホームページを参考にまとめていきます。
刑務作業とは、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせることを言います。その趣旨は、刑事施設内で規則正しい生活を送らせることにより、心身の健康を維持し勤労意欲を養成し、共同生活における自己の役割や責任を自覚させ、受刑者の勤労意欲を高め、職業的知識及び技能を付与・習得することにより改善更生及び円滑な社会復帰を図るためにあります(刑事収容施設・被収容者法94条1項)。
刑務作業に従事する者としては、12条2項の「所定の作業」として就業している懲役受刑者はもちろん、罰金等を納められない代わりに就業する労役場留置者もいます。また、就業義務はないですが、申出により就業する禁錮受刑者及び拘留受刑者もいます。
なお、収容生活の中で一定の要件を満たしている受刑者については、刑事施設の職員の同行なしに刑事施設の外の民間の事業所に通勤して作業に従事させたり、職業訓練を受講させたりしています。これを外部通勤作業と言います。これにより、受刑者は自律心や責任感に基づいて、社会的な職業集団における自己の地位・役割を認識することにより、一般社会における人間関係の在り方を学び、社会的視野の拡大を可能にする等、円滑な社会復帰を図っていきます。

種類

刑務作業には、生産作業・社会貢献作業・職業訓練・自営作業の四種類があります。懲役受刑者には、矯正処遇として、刑務作業を行わせるほか、各種の指導を行うこととされています(刑事収容施設・被収容者法84条)。
刑務作業については、受刑者ごとに、刑事施設の長が指定し(刑事収容施設・被収容者法92条)、受刑者等は、木工・印刷・洋裁・金属及び革工などの業種から、各人の適性等に応じて職種が指定され、就業します。
受刑者は、1日8時間以内の時間で就業しています。

生産作業

物品を製作する作業及び労務を提供する作業を指します。これはさらに3つに区分されます。

製作作業

生産に用いる原材料の全部又は一部が国の物品である作業を言います。

提供作業

生産に用いる原材料の全部が契約の相手方から提供された物品である作業又は国が被収容者の労務のみを提供して行う作業を言います。企業や個人といった注文者が刑務所に対して、発注及び原材料・機械等を提供し、刑務所から製品の納入等及び対価となる労務賃等の請求をすることになります。

事業部作業

生産に用いる原材料の全部又は一部が、公益財団法人 矯正協会の刑務作業協力事業部の物品となっている作業を言います。
→公益財団法人 矯正協会 刑務作業協力事業部とは、刑務所における受刑者の作業を安定的に運営するため、刑務作業に必要な原材料の供給、製品の販売等の事業を行っている部署を言います。

社会貢献作業

労務を提供する作業ですが、これは、社会に貢献していることを受刑者が実感することにより、その改善更生及び円滑な社会復帰に資すると刑事施設の長が特に認めるものをいいます。具体例としては通学路等の除雪作業や植生保全のための除草作業等が挙げられます。
社会貢献作業は、コロナ渦で大きな役割を果たしました。医療機関で感染症を防護するために使用されているアイソレーションガウンは、多くが海外からの製造輸入に依存していたため、新型コロナウイルス感染症の拡大により、国内の医療機関等で深刻な状況となりました。
これを踏まえ、縫製設備を有する全国42箇所の刑務所において、令和2年5月中旬から令和3年3月末までの間、約140万着のアイソレーションガウンを製作し、都道府県等を通じて、医療機関に送付しました。

職業訓練

労務を提供する作業ですが、これは、出所後の就労が有利に働くよう受刑者に職業に関する免許若しくは資格を取得させ、又は職業に必要な知識及び技能を習得させることを目的として実施しています。職業訓練はさらに
・「受刑者等の作業に関する訓令」に基づき、全国から受刑者を集める総合訓練
・刑事施設の所在地を所管する矯正管区の管轄区域内にある他の刑事施設に収容されている受刑者を集める集合訓練
・実施施設の受刑者を対象とする自庁訓練
の三つの方法によって計画的に実施されています。
職業訓練では、溶接科、建設機械科、フォークリフト運転科、情報処理技術科、電気通信設備科、理容科、美容科、介護福祉科等といった約50種目が実施されています。

自営作業

炊事、洗濯等をはじめとする受刑者等が矯正施設で生活するにあたって必要な作業を言います。施設によっては、建物の簡単な修繕や畳替等も行っています。

収入

国が民間企業等と作業契約を結び、受刑者の労務を提供して行った刑務作業に係る収入は、すべて国庫に帰属します(作業収入)。法務省のホームページによると、令和元年度の刑務所作業収入は、約35億円となっています。そのため、作業収入は、懲役受刑者の収入とはなりません。
もっとも、刑務作業を実施した懲役受刑者には作業報奨金(刑事収容施設・被収容者法98条)が支給されます。これは、出所後の生活資金の扶助として支給されます。原則として釈放の際、本人に対して支給されますが、在所中であっても、所内生活で用いる物品の購入や家族の生計の援助等に使用することも認められています。ちなみに、法務省のホームページによると、令和2年度における、作業報奨金の1人1月当たりの平均支給計算額は、約4,320円となっています。
また、国は、刑務作業を実施するに当たって、労働安全衛生に関する法令に準じた措置を講ずる等していますが、就業者が作業上不測の事故等により、身体に障害が残ったとき等は、障害の程度に応じて手当金が支給されることになります。

実情

  刑務作業は、全国75の刑事施設(刑務所,少年刑務所及び拘置所)において実施されています。法務省のホームページによると、令和2年12月末日現在、約3万7千人の方々が就業しています。
刑務所で製作した製品は、従来から刑務所作業製品と呼ばれていますが、刑務作業協力事業部は、より広く親しめるブランドイメージに変えるとともに、「安くて品質の良い」商品として周知してもらうため、「CAPIC」という商標を用いています。そして、売上げの一部を犯罪被害者支援団体の活動に助成するという活動を行っています。

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