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弁護士コラム

うつ病で労災認定はできるの?

労働問題
2019.04.05

仕事のストレスで、うつ病になってしまう例は少なくありません。過労であったり、人間関係のストレスがきっかけであったり、様々なことが原因になります。その際に、労災の申請が認められるのか、今回は解説していきましょう。

うつ病の労災認定とは

増加傾向にある、うつ病の労災認定

2017年6月30日に厚生労働省から発表された「過労死等の労災補償状況」によれば、2016年度に労災認定を受けたのは498人で、うつ病などの精神疾患による労災申請は前年度から71人増え1586人と、過去最多となりました。

業種別でみると、支給決定件数が最も多いのは「製造業」、2位は「医療・福祉」、3位は「卸売業,小売業」で、年齢別でみると、支給決定件数は「40~49歳」144件、「30~39歳」136件、「20~29歳」107件の順に多い結果です。

責任世代と言われる40代が最も多いのは納得できるところですが、20代の支給決定件数が前年度よりも20件増え、全体の2割程度を占めることになり、若年層に対する業務の負荷が非常に高いことが見て取れます。上司に残業を強いられたり、新しくできた部下の世話をしたりと、板挟みになった若年層をケアする制度が、特に小さな会社では、あまり充実していないのも現状です。

 

うつ病が労災認定される要件

では、うつ病を理由に労災認定されるのはどのような場合なのでしょうか。

うつ病それ自体は、医療機関が想定するいくつかの質問に解答し、医師による診断により認定されます。しかし、うつ病が仕事によるものであるという因果関係がなければ労災は認定されません。例えば、仕事が忙しくても、プライベートで恋人に振られてアルコールに依存するようになり、そのうちにうつ病になったというような場合では、仕事とうつ病との直接的な因果関係が認められにくいため、労災認定されることは厳しいでしょう。

本当に仕事によるストレスが発病の原因なのかを慎重に判断しなければならないため、うつ病を労災認定するためには、次の3つの要件を満たす必要があります。

 

労災認定の要件

 

①認定基準の対象となる精神障害を発病していること

②認定基準の対象となる精神障害の発病おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

③業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

 

以下で詳しく見ていきましょう。

 

①認定基準の対象となる精神障害を発病していること

認定基準の対象となる精神障害とは、国際疾病分類「精神および行動の障害」の中に合致する障害である必要があり、うつ病は「気分(感情)」障害としてこれに該当します。

②認定基準の対象となる精神障害の発病おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

労働基準監督署が調査を行い、「特別な出来事」があったと認められるときは、この要件を満たします。「特別な出来事」とは、心理的負担が極度のものと、極度の長時間労働に分類されます。心理的負担が極度とは、例えば生死にかかわる業務上の怪我をした場合や、業務に際し過失により他人を死亡させた場合が挙げられます。

「特別な出来事」がない場合であっても、心理的負荷が「強」と認められる場合には、この要件を満たします。その判断は厚生労働省が定める評価表に詳しく記載されており、「強」の例としては、「業務に関し重大な人身事故、重大事故を起こした」場合や、「会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをし、事後対応にも当たった」場合などです。また、「中」と評価される場合であっても複数の「中」の出来事が存在すれば「強」と認定されることもあります。

評価表にある「具体的出来事」には5つの類型があり、①事故や災害の体験、②仕事の失敗、過重な責任の発生等、③仕事の量、質、④役割・地位の変化等、⑤対人関係、⑥セクシャルハラスメントに分けられ、詳細に定められています。

③業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

業務以外の心理的負荷

「業務以外の心理的負荷評価表」を用い、心理的負担の強度が強い事柄が認められる場合は、仕事によってうつ病になったとは言い難いとの判断に傾きます。評価表には出来事の類型が6つあり、①自分の出来事、②自分以外の家族・親族の出来事、③金銭関係、④事件、事故、災害の体験、⑤住環境の変化、⑥他人との人間関係に分けられます。

 

個体側要因により発病したか

個体側要因とは、その人が特別に持つ病気や習慣をいい、精神障害の既往歴やアルコール依存にあることなどをいいます。個体側要因の有無と内容に照らし、個体側要因がうつ病に影響を及ぼしていると認められるとき、因果関係の判断は慎重行うことになります。

 

うつ病が労災認定されたら貰える給付金

うつ病が労災認定されたら、3種類の給付金を受けられる可能性があります。①療養補償給付、②休業補償給付、③傷病補償年金です。それぞれどのようなものか詳しく見ていきましょう。

①療養補償給付

労働者が業務が原因でうつ病になって療養を必要とするとき、療養補償給付が支給されます。

療養補償給付には、「療養の給付」と「療養の費用の支給」があります。

「療養の給付」は、労災病院や指定医療機関・薬局などで、無料で治療や薬剤の支給を受けられることで、現物支給です。

「療養の費用の支給」とは、近くに指定医療機関がないなどの理由で指定医療機関で療養を受けた場合に、療養にかかった費用を支給することで、現金給付です。

給付の対象となる療養の範囲や期間は同じで、給付には、治療費、入院費、移送費など通常療養のために必要なものが含まれ、症状が「治癒」するまで行われます。

なお、ここにいう「治癒」とは症状固定を指し、症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行ってもその医療効果が期待できなくなった状態を指します。

 

②休業補償給付

労働者が業務が原因でうつ病になり療養のため労働することが出来ず、そのために賃金を受けていないとき、その第4日目から休業補償給付と休業特別支給金を受けることができます。

支給額は、次のように計算します。

休業補償給付:給付基礎日額の60% × 休業日数

休業特別支給金:給付基礎日額の20% × 休業日数

休業の初日から第3日目までの間は、事業主が休業補償をしなければならず、1日につき平均賃金の60%が支払われます。

 

③傷病補償年金

業務が原因となったうつ病の療養開始後1年6か月を経過した日またはその日以後、①うつ病が治っておらず、②うつ病による障害の程度が傷病等級表の等級に該当する場合、傷病補償年金を受給することができます。

うつ病が傷病等級に該当するためには、うつ病により「常に介護を要する」状態であること(1級)、「随時介護を要する」状態であること(2級)、「常に労務に服することができない」状態であること(3級)が必要です。

支給額は次のように計算します。

第1級:傷病補償年金は給付基礎日額の313日分、傷病特別支給金は114万円

第2級:傷病補償年金は給付基礎日額の277日分、傷病特別支給金は107万円

第3級:傷病補償年金は給付基礎日額の245日分、傷病特別支給金は100万円

 

うつ病に基づき労災申請をする際の手続き

 

 

①療養補償給付

「療養の給付」の場合、指定病院等で診察を受け、事業主から請求書に仕事中のケガ・病気であることを証明をしてもらい、療養の給付請求書を病院に提出すれば、給付を受けることができます。

「療養の費用の支給」の場合、指定病院等以外の医療機関で診察を受け、一旦治療費を払い、病院から請求書に治療内容についての証明をしてもらいます。そして労働者が労働基準監督署に療養の費用請求書を送付すれば、給付を受けることができます。

 

②休業補償給付

労働者が、事業主により仕事によって生じた病気であるとの証明と医療機関により病気及び治療内容の証明をしてもらい、証明を付した請求書を労働基準監督署に提出します。労働基準監督署は審査を行い、給付すべきと判断した場合には支給決定通知書を労働者に送付します。そして、労働者に給付金が支払われます。

 

③傷病補償年金

傷病補償年金を支給するか否かは、所轄の労働基準監督署長の職権により行われるので請求手続きはありません。ただ、療養開始後1年6か月が経ってもうつ病が治っていないときは、その後1か月以内に「傷病の状態等に関する届」を提出する必要があります。

 

うつ病となった時、弁護士に相談すべき理由

うつ病と診断されるには、医師から聞かれるいくつもの項目に答え、その点数が一定以上でなければなりません。嘘をついてはいけませんが、回答の仕方によって点数が異なる事があるので注意が必要です。例えば、「食事をとれているか」という項目があります。一日に三食を一応食べれている場合、「はい、とれています」と答えることも多いと思います。しかし、ここにいう「食事をとれる」という具体的な意味は、「栄養のバランスを考え適当量の食事を適時に取ることができる」ということで、食事内容が偏っていたり食べ過ぎてしまう場合には、「食事をとれていない」となり、うつ病と認定する際の点数が高くなります。

このような具体的な認定基準について、労災について多く取り扱う弁護士は良く知っています。

また、仕事によりうつ病になるケースでは、長時間労働が常態化していたり、労働時間や環境について会社側が配慮すべき義務を怠っていることが多いため、残業代請求や損害賠償請求をすることも考えられます。したがって、うつ病かな、と感じたら、是非一度専門家である弁護士にお気軽にご相談いただければと思います。

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